WTC


世界貿易センタービル
その跡地。


あのとき、高校3年生だった、
テレビのニュースで何度も観た、
映画のようだった、というよりは
映画よりもよっぽど、すごかった。


もうすぐ文化祭で
何か浮き足立った季節だった。
テレビで毎日のようにあの瞬間の映像を見ていて
きっとこれから自分の生活も変化するんじゃないかと思った。


だけど何も変わらなかった。
通信技術の発展で、こんなに離れた東京から
何が起こったか全部傍観していたというのに、
私の日常は何一つ変わらなかった。
文化祭は予定通り行われたし、
無事に高校だって卒業した。


瓦礫と粉塵にまみれたあの街の面影はそこには無かった、
復旧作業の勧められる現場は、ただの工事現場と変わらない。
自分には霊的なものを感じる力なんて無いと思うけど
あそこで感じた悪寒に似た寒気は、一体なんだったんだろう。


雨が、降ってきた。
ひどくどんよりとしたニューヨークだった、
あの日の傷跡はまだこの街に深く残っていると強く感じた。