過去のない男
これを見たいなって思ったのは、
角田光代の
銀の鍵という本を
けっこう前に読んでいたから。
この本は、カウリスマキ監督の、
過去のない男にインスパイアされて生まれた物語。
多分この本を買った理由は
挿絵が、100%ORANGEだったからで、
そうして好きなものをきっかけに
別のものへ興味関心がうつっていったりして面白い。
殴られて記憶がなくなるなんて、
やっぱり絶対悲劇にだってなりうるのに、
この話は別に
悲劇という訳ではない。
ただ坦々と、記憶がなくなった男の日常が描かれている。
この、主人公とカメラの距離感、
監督の距離感がいい。
感情移入して悲劇的に描く訳でもなくて
ぽつりぽつりと、人の温かさが出ていたり、
かといってそれも必要最低限のもので、
押し付けがましくない。
過去をなくして
私は坦々と
うまく生きていけるだろうか。
日本ってどうなんだろう、
過去をなくした女に、寛容な国だろうか。